※本原稿は、Business Journal 2013年1月9日号に掲載されました。
学ぶことを誰よりも情熱的に追求し続けた井上氏は、作家デビューするとすぐにベストセラーを連発し、新たな世界でも成功者となった。そこで、今最も売れている著書『「学び」を「お金」に変える技術』の話題を中心に、学ぶことがなぜ成功へとつながるのか、さらに成功のための具体的な手法などを語ってもらった。
鈴木 振り返れば、井上先生と僕のお付き合いは、もう10年以上になるんですよね。先生はその間にたくさんの本をお出しになっていますが、今秋刊行された『「学び」を「お金」に変える技術』(かんき出版)は、どれくらい売れているんですか?
井上 今、7万部ですね。まだ出版して約1カ月半なので、相当売れているみたいです【※本対談は2013年11月下旬に収録】。
鈴木 それはすごい。私も拝読させて頂いたのですが、感銘を受けたり、共感したりする部分が多いです。それにしても、先生は、私と出会った10年以上前からすでに医学界で成功されていたわけですが、それでも常に“学び”を続ける、“学びの達人”でいらっしゃって……その源泉はどこからくるのでしょう?
井上 そうですね、ビジネスにおいて上手くいっている人・上手くいっていない人がいますよね。で、上手くいっていない人が、よく時代背景だとかを理由にしますが、やはりそれは違うんですね。
私が一生懸命学んでみると、上手くいっていない人はきちんとそれらを学んでいなかった、ということが分かるんです。それは、ビジネスの仕組みという点でもそうですが、同時に、マインドの強さというものも、学びによって培われるものだと思うんです。
そうすると、“学び”以外に自分が成長し続けることはありえない。僕は病院を経営していますから、そういう意味でも成長し続けたいんですね。
さらに、今はこうやって本の出版もしていますから、読者というお客様に上質の内容を提供したい。そうすると、やはり学ぶしかない、ということに尽きると思いますね。あとは、成長するのが好きなんでしょうね(笑)。
鈴木 本の中でも、「学びは止めた瞬間に落ちていく」と、これはスポーツに喩えられていますけれど、その学び方もかなり工夫されていらっしゃいますよね?
井上 学ぶといっても、時間は限られていますから、例えばCDの聴き方や本の読み方といった情報の摂り方について、どうしたら効率良く学べるかを考えて勉強しています。
鈴木 そこで私が非常に感銘を受けたのは「『微差』が『大差』を生む」というくだりです。多くの人は、ちょっとした時間があっても、なかなかその時間を使って学ぼうとはしませんが、先生は少ない時間も決して無駄になさらない。
井上 そこも、学びによって得ているんですね。「どうして、その少ない時間を活用するんですか? 井上先生はそういう時間の活用が自然にできたんですか?」と聞かれることがありますが、自然になんてものはひとつもないんです。
学びによって時間の管理ーー例えば、10分時間があったら何をするのか、5分だったら何をするのか、3分だったら何をするのか。そういうことを自分の中でワークして、落とし込んでいるんです。
鈴木 なるほど。
井上 ですから、自分の中の今日の目的・目標を達成するために、空いた時間で何をするかは、瞬時に決められるんです。
それによって、小さな時間の積み重ねができる。やはり、ミラクルというのはなくて、小さなコツコツの積み重ねしかないと思うんですね。
そうしたら、僕のfacebookで、「井上先生を顧問に、コツコツクラブを立ち上げました」なんていう人がいましたが(笑)、そういう工夫と応用を、学びによって実践していくわけです。
鈴木 私は本の中で、「1%アクション」を提唱していて、それはつまり、大きなことを成し遂げるには、この「1%アクション」を積み重ねていくしかない、と表現しているんですが、まさにそこが先生のいう、「『微差』が『大差』を生む」という考えと共通するのではないかと思うんです。
さらに、先生の本の中で印象深かったのは、先生が学びを続けられていくなかで、一流を目指されていくじゃないですか。そこで、(ダイヤモンド社が主催した)ドラッカー塾に入られたんですよね?
井上 マネジメントを勉強しようと思った時に、たしかに日本でも多くの先生が著書を出されていますが、世界の一流のマネジメント思考がその著者の先生の思考に入って咀嚼されたものよりも、原著をまず理解して、その内容が現在でも事実かどうか確認したいと思ったんですね。
これは、大学院で論文を書いていたからかもしれませんが。で、マネジメントを学ぶなら、やはり世界的な権威と言われているドラッカーを学ぶのが一番早いのではないかと思ったんです。
直接、自分の耳で聴いて、自分の頭で咀嚼すると同時に、自分とは違う頭を持つ人が咀嚼したものとの違いを比較して、その違いをもたらしているものが何なのか、そこにどんな真実が、実践的なものがあるかを知りたかったんですね。
当時、30代後半の身にとっては結構高額なプログラムで、「高いな」と思ったんですけれど、主催者側に「これ、騙してないよね?」と尋ねたら、「騙してない」というので(笑)、実際に受けてみたんです。やはり、世界のドラッカーのプログラムだけあって、その価値はありましたね。
井上裕之(いのうえ・ひろゆき)
歯学博士、経営学博士、コーチ、ベストセラー作家、セラピスト、経営コンサルタント。医療法人社団 いのうえ歯科医院理事長。34歳のときに大事故に遭い、愛妻が植物状態になるという経験をする。それ以来、「愛妻を救いたい」という想いから、自己成長をするべく行動を起こす。結果、6カ月の植物状態を経て愛妻が目を覚まし、今では日常生活を送っている。この時の体験を書いた『自分で奇跡を起こす方法』(フォレスト出版)はベストセラーに。新刊『「学び」を「お金」に変える技術』(かんき出版)がヒット中。詳しいプロフィールはこちら。