僕が大学を中退して上京し、初めてバイトしたのが雑誌『プレジデント』だった。
当時の編集部は、まだバブルの残り香が残っていて、活気もあり、とてもエキサイティングな経験をさせてもらった。
僕は、楽しかった『プレジデント』のバイトをダラダラと2年ほど続けた。
ある日、当時の編集長だった清丸恵三郎さんに、お食事に誘われた。
もう一人、フリーの編集者が同席されるはずだったが、その方が遅れていたため、数十分の間、清丸編集長とサシで飲む状況になった。
アルバイトの僕と、編集長では、立場が余りにも違うため、身を縮めて、恐縮しながら飲んでいた。
やおら、編集長が僕に、
「君はずっとアルバイトを続けるのか?」
と聞いた、僕は、
「まだ次に何をすれば良いか、正直、分からないんです」
と答えた。すると編集長は、僕をキっと見つめて、
「君がそうしているうちに、進むやつは、進む」
と一言伝えた。
僕の体に稲妻が走った。目が覚めた。
その後の、豪華な料理のことは、もう覚えていない。
編集長の言葉だけが、僕の頭をぐるぐる回っていた。
僕は楽しかったアルバイト生活に別れを告げ、僕なりのチャレンジをスタートした。
編集長の、あの一言は、僕の人生を大きく変えるに、十分なインパクトがあった。
その後も、悶々と一人悩むとき、編集長の言葉が蘇った。
そして、今も、蘇ってきている。