※本原稿は、Business Journal2018年9月2日号に掲載されました。
著書累計120万部を突破している、ベストセラー作家の井上裕之氏が8月18日に、『50代からのちょっとエゴな生き方』(フォレスト出版)を上梓し、すでに大きな話題となっている。
また、『がんばり屋さんのための、心の整理術』(サンクチュアリ出版)は女性から大きな支持を受け、10万部を超える大ベストセラーとなった。井上氏は、ビジネスから人生の指針まで、老若男女に幅広いファンを持つ。
今回は、そんな井上氏と、筆者の新刊『脱バカシステム!』(サイゾー)をベースに、「夢と目標は人生に必要なのか?」というテーマで対談を行った。本記事は、その対談の抜粋だ。
司会は、出版プロデューサーで株式会社スターダイバー代表取締役の米津香保里氏にお願いした。
なお、対談動画全編は、「YouTube」(『成功するために、がんばりや夢、目標はいらない!?』対談・鈴木領一✕井上裕之)において視聴可能となっている。
「自分らしく生きる」とは
-お二人は自由に生きているように見えるのですが、自分らしく生きるには、どうすればいいでしょうか?
井上 自分のエネルギーを活性化していくことですね。そのためには、必要以上に友達を増やさず、組織に依存しないことです。
すずりょうさん(鈴木領一・筆者)が『脱バカシステム!』に書かれているように、「常識」が行動のブレーキになりますから、私は付き合う人を、「常識」にとらわれている人ではなく、学びが多い、魅力のある人に限定しています。そのお陰で、自分のエネルギーが活性化されます。
鈴木 会社員の人は会社にエネルギーを奪われています。でも、会社を辞められない、どうせ会社を辞めても仕事がない、など変な「常識」が自分を縛っているんです。
井上先生の本『がんばらなくても うまくいく考え方』(PHP出版)にも書かれていますが、常識に縛られず、先が見えない時、調子の悪い時でも、「今はダメな時だ」と気楽に構えていれば、人の意見に振り回されないし、気にしなくなります。
-価値あるものを手にするには、自分で動かなくてはならないですね。
鈴木 その大前提として、現状を徹底的に否定しなくてはなりません。井上先生の本に出てくる「リセットの達人」の話がわかりやすいのですが、いつでもすぐに心をリセットできる「リセットの達人」が、離婚しようと思ったのにリセットがなかなかできなかったそうです。その人は、実は離婚したくなかったからリセットができなかったのです。
それと同じで、心の中で現状を否定できなければ、次に行けないのです。会社を辞めたいという人も、心の中で「やはりこの会社でいいか」と考えていたり、別れたいと言っていても、心の中では「別れたくない」と思っていたりします。それでは、次に進めないのです。
現状を否定してみれば、次の行動をすることができます。
井上 現状を否定するのは大切ですね。『脱バカシステム!』はとても勉強になりましたね。
夢も目標も持たなくていい」ワケ
-すずりょうさんは『脱バカシステム!』で、「夢も目標も持たなくていい」と書かれています。
鈴木 成功した人の話を聞きすぎるのはよくありません。成功した人が、「こんな家に住んでいる」「こんな車に乗っている」といった話を信じる必要はない。他人の価値観を受け入れて苦しんでいる人が多いのです。
最初から夢や目標がなくても、自分が心地よく成長できるものを、まずは見つけていこうじゃないか、というのが本の趣旨です。プロ野球選手のイチローさんのように、子供の頃から夢や目標が明確な人はいいですが、ほとんどの人はそうではないです。
-夢や目標を持っていないことで悩んでいる人いますよね。
鈴木 バカバカしいですよね(笑)。とにかく行動していけば、「あ、これは自分に向いているかもしれない」というものに出合う可能性があります。明確な夢や目標がなくても、漠然とした方向が見えるだけでもいい。私はそれを「Xメソッド」と呼んでいます。これは井上先生の主張と、それほど違わないと思います。
井上 『脱バカシステム!』で、「具体的な目標を持たなくていい」と書かれていますが、それはある意味正しいと私も思います。たくさんの成功者の人と話をすると、意外と目標や行動計画を立てていなかったりします。長く付き合って見てみると、漠然と自分のやりたいことに向かって進んでいる人が多いですね。
逆に、真面目に目標を立てて行動計画を立てている人が、ネガティブになることもあります。なんとなくやっている人は、ブレーキをかけようがないので、どんどん進んでいって、「これ見つけた!」と、うまくいったりします。
すずりょうさんの『脱バカシステム!』に紹介されているXメソッドでは、なんとなく方向を決めて、それが実現した時の周辺(自分を取り巻く環境変化)をイメージするという方法ですが、これだとすぐにイメージができます。イメージできる、ということは、すでに進んでいるということです。実際にうまくいっている人って、この感覚でうまくいっています。
この本を読んで、すごく共感しましたね。「そういえば、自分でもやっていたな」と。自分自身を客観的に分析するのは、意外に難しいです。「私がなぜうまくいくのか、誰か分析してくれないかな」と思っていたんですが、『脱バカシステム!』を読んだときに、「これだな」と思いましたし、腑に落ちましたね。
-成功者が分析できていないことを、すずりょうさんが言語化して体系化したんですね。
鈴木 私はもともと、自己啓発業界にいました。そこでは、「明確な目標を持ちましょう」「成功をイメージしましょう」と教えていました。
何万人もトレーニングをしてきましたが、うまくいく人とうまくいかない人がいたんです。うまくいかない人は、このメソッドがとてもストレスになっていました。目標がわからず前に進めないのです。そのアンチテーゼを出さなくてはいけないと、20年間研究してきました。
目標を立てると、かえって自分を小さくする?
-井上先生は、歯科医と作家のダブルワークをされて自由な生き方をされていますが、それもカッチリとした目標を立てたわけではないのですか?
井上 まさに『脱バカシステム!』で書かれているように、「世界一になりたい」「誰よりも売れる著者になりたい」という、漠然とした設定でした。その上で、その周辺の方向性として、「どこに勉強に行こうか」とか、「誰に教わればいいのだろうか」という感じで、やることを見つけていきました。
この世の中には、嘘の常識が多い。まさに洗脳社会ですね。そういった間違った常識の、狭い枠の中で立てる「明確な目標」は、小さなものしかできない。逆に目標を立てないほうが、大きな可能性に挑戦できます。
-目標を立てることで、逆に自分を小さくしてしまう可能性もありますね。
井上 目標は、過去の自分の体験や、見てきたことから組み立てるわけだから、ちっぽけなものですよ。本当の目標は、過去の経験値にもない、想像もできないものです。
鈴木 もし私が20代前半に「目標を立てなさい」と言われたら、今の私のような状況を思い描くことはできませんでした。
20代前半では、人前で話すことはできなかったので、絶対に人前に出るような目標は立てなかったでしょう。ただ、パソコンの前でできることしか考えなかったはずです。
しかし、ある時に「自分は人前で話をすることができる」と気付いたんです。それはいろいろやっていくうちに気付いたんです。そこから、未来がばーっと広がりました(現在は、講演やコンサルの仕事も行っている)。
自分の未来を、過去の延長線上から設定すれば間違うんです。自分の潜在能力を排除してしまう可能性があります。「自分はもっとできるかもしれない」という大枠で見たほうが、可能性が広がります。
井上 私くらいの歳になると、逆にそれがわかってきます。「このままで終わっていく人生って、おかしくない? もっとデカいことできるんじゃない?」と思うようになりますね。常識という概念を超えていこうという気持ちになりますよ。
-歳を取れば取るほど可能性が広がる。
井上 そうなんです。逆なんですよ。人生で失うものがなくなります。「苦しい思いをしたって、人生あとわずかだ。だからもっとやろう」と思えるんです。若い頃にはない考え方です。本当の意味で、自分の人生を後悔しないために、目覚めることができます。
鈴木 確かにそうですね。逆に若い頃のほうが保守的な考えをしがちですね。親や先輩方を見て、「自分はここでいいんだ」と考えがちです。私も年齢を重ねるごとに「もっとできるはずだ」と考えるようになりました。
井上 できないと思う自分が、一瞬でもいると悔しいです。「まだ古い概念にとらわれているのか」と感じるのです。脳の破壊ができていない自分が悔しい。
想像を超える未来
-『脱バカシステム!』に、「ビヨンド(想像を超える未来)」という概念が出てきますが、井上先生のようだと思いました。
鈴木 その通りで、井上先生はビヨンドの体現者ですね。私は井上先生が本を出される前から知っていて、それこそ十数年来の知り合いなのですが、次々に新しい扉を開いていかれるのを目撃してきました。それは、先生が常に現状に満足されず、新しい可能性を追いかけられた結果、ミラクルが起きているように思います。
井上 『脱バカシステム!』のなかで、「突然飛躍する瞬間が訪れる」と書かれていますが、まさにその通りですよね。それは人間関係が関与していると思います。この本にも書かれている通りです。『脱バカシステム!』は、今の時代だからこそ、読んだほうがいい本だと思います。
-読者に向けて、最後にメッセージをお願いします。
井上 失敗しても、意外に取り返せない失敗はない。人生は必ず、どうにかなります。人に迷惑をかけない程度の、いい加減さ、フレキシブルさを持って、「大丈夫、どうにかなる」と生きていく人のほうが、大きな成功、大きな満足、充実した後悔しない人生が送れます。そうじゃないと、一見充実しているようでも、心が満足しない、表面的なものになってしまいます。自分らしく生きていったほうがいいです。
鈴木 私は「1%アクション」という概念を提唱しています(参考:『100の結果を引き寄せる1%アクション』)。
一日にできることは、成功している人でも、そうでない人でも、そう多くはありません。一日にできることはわずかです。今日できるわずかのこと、メールを出す、本を読むとか、出かけて何かを見るとか、そういった「1%アクション」を重ねることで、その先に自分が想像もしなかった出来事が起きて、人生が変わってしまうことがあります。それを少しずつできる人が、自分が本当に行きたいところに行けます。