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ホットペッパービューティー、業界トップへ急成長の秘訣はリクルートの人間力?

※本原稿は、Business Journal2014年10月30日号に掲載されました。

10月16日、リクルートホールディングス上場のニュースが世間を賑わせた。東京証券取引所第1部に上場したリクルートの初値で計算した時価総額は約1兆8200億円となり、東芝の時価総額と肩を並べる大型上場となった。消費税増税後、景気停滞ぎみであった日本経済において久々に大きな話題となった。

そのリクルートの中でも、特に勢いよく伸びている事業部門がある。それは、ヘアサロンをはじめ、ネイル、リラクシゼーション、エステなどの各種サロンを予約するサイトで、2007年4月に誕生し、今年10月現在で4万3077店が登録するまでに急成長した「ホットペッパービューティー」(以下、ビューティー)だ。

ヘアサロンに通う場合に、近所の店舗に電話予約をしてから訪れるという従来のスタイルから、スマートフォン(スマホ)で自分の好みに合った店舗を探して、ウェブ上で予約まで完結させるスタイルへと変化している潮流には、ビューティーが大きな役割を果たしているだろう。

今や2秒に1回予約が入るまでに成長したビューティーは、7月にまったく新しい顧客サービスを開始した。それが「ホットペッパービューティーアカデミー(以下、アカデミー)」である。

アカデミーは、ビューティーを利用している店舗経営者向けの、いわば学校である。美容室は全国で22万店あり、信号機よりも多いとまでいわれる。人は必ず髪を切る必要があり、なくてはならない必需産業である。美容室の8割は個人経営であり、そのほとんどは美容師が経営者も兼ねているため、技術はあるが経営の知識が乏しく、体系的に経営を学べる場を求めている経営者が多いという。

サロン経営者の悩みに答えるアカデミーの開催

アカデミー長である千葉智之氏によれば、サロン経営者の悩みは大きく分けて3つあるという。

「一つ目は集客です。限られたパイの中で美容室は増え続けており、過当競争となっています。従来のように容易に新規集客ができて経営が成り立っていた時代は終わり、新規集客に加えてリピート顧客の安定化にも力を入れることが重要となっています。

次は採用です。美容室は増えてきていますが、美容師の数は減少傾向にあります。つまり美容師の争奪戦が起こっているのです。優秀な美容師を獲得できるかどうかが店舗の売り上げに直結するため、どの経営者も必死です。

3つ目が育成です。せっかく美容師を採用できたとしても、上手に育てることができなければ意味がありません。また、優秀に育った美容師が突然辞めるようなことがあると、経営的にも大打撃です。人を育て、そして長く勤めてもらえるようにするにはどうすればよいか、これは経営者の長年の悩みなのです」(千葉氏)

「集客・採用・育成」この3つの悩みに答えるのがアカデミーの役割だ。

アカデミーはビューティーに掲載しているサロンでなくても、誰でも無料で受講できる。講座はビューティーを活用した集客や予約受付の基本を学べる「ベーシック講座」と、人材育成やマネジメントを学ぶ「アドバンス講座」の2つがある。

ベーシック講座では、予約管理システム「SALON BOARD」の使い方に力を入れている。今や美容室の予約の多くがスマホ経由となっている。スマホで検索して、予約を入れようとする際、利用者は空き情報を確認するが、その情報が常に最新状態にアップデートされていなければ新規顧客を獲得できる機会を失う可能性がある。SALON BOARDは、ウェブ上で管理できるシステムとなっている。その基本操作や管理手法の基本を学ぶことが集客にもつながるというわけだ。

アドバンス講座は、リクルートが得意とする事業のひとつである人材教育に関する講座だ。この講座の講師は、社内のマネージャークラス以上の社員が担当している(社内ライセンス制度で資格を取る必要がある)。

人材教育の専門会社であるリクルートマネジメントソリューションズがコンテンツのベースを作成し、その内容に沿いながらも講師は自らの体験を交えてアドリブで話すこともあるという。

それぞれ1回60~90分の講座を一日2回、全国30エリアで開催しており、東京・大阪では毎月、名古屋などの地方都市では隔月で実施している。告知をするとすぐに予約で埋まるほどの盛況で、今後は実施回数も増やす予定だという。

人間力重視の姿勢で成功

「アカデミーには、売り上げ目標はない」と千葉氏は言う。

「もともとは、全国40カ所の営業拠点で営業担当者が月に一度お客様を訪問し、SALON BOARDの使い方やお悩みに対応していました。いわば『家庭訪問型』でお伝えしていたといってもいいでしょう。そしてお客様が増えてくると、コールセンターやメールで対応させていただくことが増えるようになりました。これは『通信添削型』といえます。

さらにお客様が増え、お問い合わせの幅も広がってくるようになり、アカデミーという『塾型』へと変化してきました。お客様を第一に考え、自然な流れでアカデミー設立へとつながってきましたので、このアカデミーによって新規のお客様を増やすことや売り上げを上げることは考えておりません。そういう意味でも、気楽に参加していただき、弊社が自信を持ってお勧めする講座をご受講いただきたいです」

売り上げ目標はないが、初年度は5000名の参加者を目標にしているという。アカデミーはネットではなく、実際に会場で講座を開いている。ネットで成長してきたビューティーだが、リアルにはこだわりたいという。

「私どもはコンテンツと講師が命です。そのためにリアルに顔が見える場所で、私たちのノウハウと想いを直接伝えていきたいのです」(千葉氏)

ネットが発達し、既存のビジネスモデルが大きく様変わりしていく中で、ともすれば人間が置き去りにされてしまう危険性もはらんでいるのが現在である。しかし、ここでは人間力を第一に考え、絶え間ない人との関係強化を怠らない姿勢があった。

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この記事を書いた人

思考力研究所所長、ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー、一般社団法人「日本経営コーチ協会」アドバイザー
著書:100の結果を引き寄せる1%アクション他多数

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