※本原稿は、プレジデント誌2012年11月12日号に掲載されました。
そろそろ年末の話題も聞こえてくる。年末といえば忘年会、忘年会といえばカラオケだ。カラオケは日本が世界に発信した文化の代表格だが、近年業界は伸び悩んできた。
カラオケ人口は5000万人だが、施設数は1997年の1万3800施設から2009年には6900施設まで半減、その後は横ばいだ。しかし、この閉塞感を打ち破るコンセプトが誕生し急速に業績を伸ばしている。「一人カラオケ」だ。
カラオケ店舗数で日本一(国内317店舗)の株式会社コシダカは、業界唯一の1人カラオケ専門店「ワンカラ」を11年11月、東京・神田に出店した。ワンカラはこれまでのカラオケ店とは何もかも違う。一部屋は2平方メートル程度しかない。防音完備の部屋でヘッドフォンを付けてカラオケを歌い、1時間600円から利用できる(店舗により異なる)。
「従来のカラオケ店でも2割ほどお一人でご利用されるお客様があり、ワンカラの構想が生まれました。お一人様ブームもあり、神田店を出してすぐに話題になり月商も24室で600万円を超え、想像以上の反響でした。現在は6店舗を展開しています」と、首都圏事業本部の矢野斉氏は言う。
仲間と行くカラオケは何かと周りに気を遣う。純粋に歌に集中できるという意味で、カラオケの本質的な楽しさを実現したのが「一人カラオケ」といえるだろう。ワンカラでは1.5時間以上利用するお客は6割、年齢層は20代後半から40代までと幅広い。
仕事帰りに利用するビジネスマンも多いという。ワンカラの成功をみて大手他社も一人カラオケスペースを併設し追随しはじめた。また、スマートフォンを使って一人カラオケができる「スマカラ」という商品も家電量販店で人気だ。
伸び悩む商売の逆転のヒントがここにある。お客の潜在的需要を見抜けば、新しい商売は生まれてくるのだ。