大塚家具の“親子げんか”は壮大な炎上商法?好調なインテリア業界、「少子化で苦戦」は嘘

※本原稿は、Business Journal2015年4月22日号に掲載されました。

衆目を集めて激しい“親子げんか”が展開された、大塚家具の「会長対社長」の戦い。3月27日の株主総会で、会社側提案が61%の賛成を得て大塚久美子社長の再任が決まり、大塚勝久氏が会長を退くことで決着がついた。

筆者は、状況を冷静に判断できる久美子社長を支持する立場だが、創業者である勝久氏の気持ちもよくわかる。筆者自身も会社経営者で創業者でもあるので、自分の会社は自分の人生そのものであるという心情は理解できる。そういう意味では、久美子社長が勝久氏にうまく引導を渡せなかったことにも、責任の一端があるだろう。

しかし、そもそも論でいえば、今回のお家騒動は大塚家具の業績がよければ起こらなかった。大塚家具の過去5年間の売り上げは、550億円ほどでほぼ横ばい状態だ。2000年代の業績を見ると、経常利益は01年の約76億円をピークに減少し続け、09年には約13億円の赤字に転落している。その年に久美子氏が社長に就任し、10年から13年まで黒字化に成功した。しかし、昨年再び赤字となり、今回の騒動が起きたのである。

ライバル企業のニトリは、01年に売り上げで大塚家具を抜き去ると、右肩上がりで急成長を遂げ、今や売り上げ3800億円を超える業界1位となった。インテリア業界は約7000億円規模で、過去10年間伸び続けている。大塚家具の一連の騒動では「少子化の影響で家具が売れなくなった」という報道も多かったが、近年を見る限り、その兆候はなかったといえる。大塚家具が低迷したのは市場の変化のせいではなく、明らかに経営手法に問題があったといわざるを得ない。

さて、直近のインテリア業界はどうだろうか。一般的に、引っ越しシーズンの3~4月に家具が売れるかどうかが、年間の売り上げを左右することになる。

また、「景気がよくなれば、引っ越しが増える」とよくいわれる。景気がよくなれば企業の人材採用が増え、人の移動が増える。そうなると引っ越しが増え、家具も売れるというわけだ。「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあるが、「景気がよくなれば家具屋が儲かる」といえるだろう。

消費マインドは上向きに

景気動向を予測するには、「今後、人々がお金を使いそうかどうか」を調べればいい。インターネット調査会社・マクロミルの定点観測調査データ「MACROMILL WEEKLY INDEX」の中から「消費予想」を見てみよう。4月第3週時点で、今後1カ月の個人消費量が前年より4.9ポイント増加すると予想されている。

昨年の4月は消費税の増税があったため、消費マインドは大きく落ち込んだが、今年は一転して大きく上向いているようだ。自動車業界のベースアップが過去最高水準となるなど、景気のいいニュースが消費マインドを後押ししているのかもしれない。インテリア業界には追い風が吹いているといえるだろう。

大塚家具の久美子社長は、再任された株主総会直後の会見で「お客さまにお詫びと感謝を込めてセール企画を検討したいと思います。ご期待ください」と述べた。壮大な“炎上商法”だったのかと思わせるほどの商売人魂であり、筆者もつくづく感心した。

今回の“親子げんか”は、連日のようにテレビや新聞を賑わせたが、大塚家具にしてみれば無料で大宣伝ができたようなものである。そういう筆者も今回の記事で大塚家具を取り上げているわけで、まんまと術中にはまっているのかもしれない。

実際、宣伝効果は10億円をくだらないといわれており、その効果で今年度は売り上げが170億円以上増えるという試算まである。今月18日に全国16店舗で始めた「お詫びセール」では、初日だけで1万257人が来店し、社長の名前「久美子」から企画した93万5000円の高級寝具セットも初日に完売するほどの大盛況だった。

当日、久美子社長はテレビ局の取材に喜んで対応していたが、ラジオ局の取材は一切断ったという。宣伝効果が大きいメディアを選別していることからも、久美子社長がこの「お詫びセール」をPRの手段として上手に利用していることがわかる。

この波に乗って、大塚家具が再生できるかどうか。久美子社長の手腕が、今まさに試されている。

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