景気回復のカギ「夏休み消費」、旅行動向から占う 消費支出は過去最悪、旅行者数は最高…

※本原稿は、Business Journal2014年7月16日号に掲載されました。

サッカー、FIFAワールドカップ(W杯)ブラジル大会で、日本はC組最下位で1次リーグ敗退となった。日本サッカー史上最強といわれた日本代表の予想外の敗退に、サッカーファンの誰もが落胆したが、落胆したのはサッカーファンだけではない。W杯特需を見込んでいたビジネス界も、日本代表敗退に深く落胆した。家電や外食、関連グッズの消費で3000~5000億円の経済効果を期待していたからだ。

 

筆者の自宅近くにあるコンビニエンスストアチェーン、ファミリーマートは、W杯が始まる前から店員が日本代表のレプリカユニフォームを着て接客していたが、敗退が決まった直後に着用をやめ、日本代表応援キャンペーンも終了した。青に染まった応援キャンペーンが、なんとも寂しく感じられたものである。

家電量販店はフルハイビジョンの4倍の解像度を持つ4Kテレビの販売に力を入れ、W杯特需を狙った。ビックカメラは6月上旬のテレビの売上高が前年同月比で5割増えたそうだが、日本敗退が決まった6月下旬は予想を下回ってしまったようだ。

しかし、日本人は忘れるのも早い。良く言えば「切り替えが早い」というべきか。日本代表敗退で落ち込んでいたかと思えば、すぐに日常生活へと戻っていった。

景気はまだ悪い?

W杯特需は期待外れに終わってしまったが、現在の日本の景気はどうなのだろうか。内閣府から6月の「景気ウォッチャー調査」の結果が発表された。この調査は、主に民間企業の景気判断を数値化したもので、景気の「気分」が数字でわかるデータであり、経済分析でも重要な指標である。以下に内閣府のコメントをそのまま引用してみよう。

「6月の現状判断DIは、前月比2.6ポイント上昇の47.7となり、2カ月連続で上昇した。(中略)6月の先行き判断DIは、前月比0.5ポイント低下の53.3となり、依然高水準ながら3カ月ぶりに低下した。(中略)景気は、緩やかな回復基調が続いており、消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動減の影響も薄れつつある」

多くのマスコミが、この内閣府のコメントを引用し、「消費税引き上げの影響が薄れ、景気が回復しつつある」という報道だった。しかし指標をよく読めばわかるが、景気の現状判断DIはいまだに50、つまり良くも悪くもないというプラマイゼロの水準よりも低く、多くの企業が「景気はまだ悪い」と実感しているのだ。また、景気の先行きに関しても3カ月ぶりに低下していることも考えれば、「回復基調が続いている」という判断は甘いといわざるを得ない。

また、総務省が6月27日に発表した5月の家計調査では、1世帯当たりの消費支出(2人以上世帯)は27万1411円で、物価変動を除いた実質ベースで前年同月比8.0%マイナスとなった。これは東日本大震災が発生した2011年3月(同8.2%減)以来の落ち込みとのことだが、経済学者の高橋洋一氏によれば過去33年でワースト2位の悪い数字で、大震災直後を“異常値”と見れば今年5月の消費活動は実質過去最悪の数字となるという。高橋氏は、このままいけば14年度はマイナス成長になりかねないと警告する。

数字が示す実態より政府が発表する景気予測が楽観的なのは、来年の消費税増税(10%)への地ならしといわざるを得ない。今年の消費増税によって景気にブレーキがかかったことが明らかになれば、来年のさらなる増税が実施できにくくなるからだ。

旅行動向

ここで注目するべきもう一つの指標をみてみよう。それは「旅行動向」である。国内旅行はGDPの変化を先取りするといわれ、国内旅行はGDPに先行して伸び、落ちる時もGDPに先行して落ちる。すなわち、GDPが伸びるかどうかは国内旅行の動向を見れば予測できるのだ。特にこの7~8月は、最も重要な月となる。

日本国内の旅行者は年間およそ2億人で、その3分の1以上が7月15日から8月31日のいわゆる「夏休み」に旅行をするからだ。

インターネット調査会社マクロミル社が定点観測している「MACROMILL WEEKLY INDEX」のデータから、「買う予定のもの」>「国内旅行」をみてみよう。7月第一週の数値を前年と比較すると、前年の8.1ポイントから今年は5.6ポイントに大きく落ち込んでいる。これも消費増税による影響と読めるだろう。この落ち込みには、もう一つの理由があると考えられる。「冷夏」の影響だ。

気象庁はこれまでエルニーニョ現象で今夏は「冷夏」になると予測してきた。しかし、6月25日に、今夏の平均気温は「平年並み」になると予報を見直したのだ。エルニーニョ現象の影響が、フィリピン付近で積乱雲が活発に発生することで相殺されるためだという。

前述の「景気ウォッチャー調査」でも、景気先行きを悲観的にとらえた理由の多くが「冷夏」の影響だった。夏に気温が1度上昇すると、5000億円消費が増えるといわれるが、「冷夏」から「平年並み」に予報が変化したため、今後の景気予測は幾分楽観的になる可能性がある。マクロミルのデータも今夏の予測が変わったことで、今後、数値の変化が起こることが予測される。冷夏の予測では旅行者が減るからである。

さて「旅行動向」に戻るが、大手旅行代理店のJTBが7月3日に発表した「2014年夏休みの旅行動向」によれば、14年の夏休みは、旅行者数が前年から15万人増加の7902万人になるという。このうち国内旅行人数7639万人、海外旅行人数263万人となる見込みで、総旅行人数は過去最高、総旅行消費額は3兆5027億円で、過去最高の13年を更新する見込みだ。

旅行先には大阪が注目されている。あべのハルカスや、7月15日にオープンするユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」が話題だからだ。

旅行者が増えた理由は、ベースアップや夏のボーナス増にあるようだが、JTBの予測通り旅行人数が過去最高を記録すれば、今年後半から来年春にかけての景気回復も現実的になるだろう。

13年4月に実施された日本銀行による異次元の金融緩和は、効果が現れるまで2年かかるといわれたが、その効果が徐々に出始めているのかもしれない。しかし、前述のとおり消費税増税によるマイナスの影響も、これから本格的に出てくる可能性がある。

日本経済にとって、7月から始まる「夏休み消費」が、今後を占う試金石となるだろう。

目次(ビジネスのケーススタディ)に戻る